2人が本棚に入れています
本棚に追加
私は、変わり者という俗称を持つ。
そんな不名誉なもの、こちらから願い下げなのだけど、それについて回る人魚という比喩には、嫌悪した覚えは無かった。
初めに述べると、私は水が好きだ。海が好きだ。泳ぐのが好きだ。
とにかく、自分が水と戯れるその瞬間、冷たく五感を刺すそれがたまらなく快感だったのだ。
さて、今私は飛び込み台に立っている。
横には、水泳パンツ一枚を衣着した、丸刈りの男の姿。
彼はただ留まるばかりのつまらないプールの水を、けっこうな形相で見つめる。
私は今、高校の水泳大会の決勝の舞台に立っている。
私は先の彼の呟きを聞いてしまっていた。
緊張する。
それはもう、結構な事だ。
しかしどうにも、私にはそれが滑稽でしようがなかった。
喉元までこう、出かかった嘲笑を飲み込む方がむしろ緊張したほどだ。
最初のコメントを投稿しよう!