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少なくとも私は、好きだからやっているに過ぎないのだ。任意。
それがなんだろう、彼は緊張という海溝に沈められているではないか。強制。
大道芸なんかより、はるかに道化らしき行動は、こういうところにごまんと転がっている。
今の今までそうだったからだ。誓ってもいい。
もう私は勝利を確信したそんな時、大気を割いて、耳障りな笛の音が響く。
たん、と一度跳躍する男子に続いて、私も跳躍。
なまあたたかい水の中に身を委ねる。
まず、私が50メートルの端に到達した。
競争相手の彼はというと、未だ3分の1か、それくらいだろう。
まぁ初めから相手にならない事は解りきっていた。後は作業的に、来た道50メートルを泳ぎ切るだけ。
塩素臭い水中を、私は無心で掻き分け、蹴った。
そして、ゴール。
ざぱぁ、と水面を割いて、私はその時初めて酸素を貪った。
新鮮とはいい難い、都会の空気が肺いっぱいに満たされ、なんだか気分が悪くなる。
沖縄出身の私、潮の匂いと共に育った私には馬があわなく、一刻でも早くこの場から立ち去りたい気分だった。
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