時代錯誤

～水牢～

人間の体内の水分は、70パーセントだという。
飲んだ水は、体内に3秒で吸収されるという。

なのにだ、私達は水が嫌いだ。
水も私達が嫌いだ。

私達は、一般に濡れるのを嫌う。寒いからだ。
そして溺れる事を恐れる。苦しいからだ。

流れる水も、私達から逃げ惑う。
手で救い上げた水も、至る逃げ道から滴り落ちていく。

嫌いあって生きているのか、私達は。
嫌っているのに欲しているのか。

そう。だんだん、嫌いは募って行く。
"好き"がピークに達した瞬間、砂時計をひっくり返したように"嫌い"が募って行く。
私は、そうじゃないらしいから異端らしいのだ。

断言出来る。
私は、未来永劫水を忌み嫌う事はないだろう。
それに根拠は無い。
ただ、やっぱり好きなのだ。

細かい粒子が無数に集まって、あの肌を刺す冷たさとすきとおった透明感を醸し出している。
なんだか、いとおしいじゃあないか。