廃墟

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数日前、ラシルは貴族からの依頼で王都にある邸を訪問していた。 「ご足労であったな」 邸の主は国の重鎮で先王の代から王の相談役を務めている者だった。 「さっそくだがこちらへ」 召し使いに先導させ庭の一画に案内された。 「うわ~~~っ」 見事に手入れされた庭だけに、その部分の異様さが目立つ。そこだけ植木や芝が枯れてしまっているのだ。 「今までも何度かあったのだが、あまり続く上に拡がってきておるのでな」 困り果てた様に言われた。 ラシルは地面に膝をつき、土に直接触れてみた。まるで何かに汚染されたかのように、土は本来の力を失っていた。 立ち上がると植木の向こうをのぞきこんだ。幾重にもなった立ち木の先に建物が見えた。 「あちらは?」 「私の敷地ではない。以前は貴族の持ち物であったようだが、何十年と放置されておる廃墟だ」 立ち木を境に敷地が隣接していた。 木の枯れ具合から、異常の原因は向こう側にありそうだった。 「廃墟ということは、今は誰も住んでいないということですね?」 「その通りだ」 ラシルはそのまま立ち木の中に入り込み、向こうの敷地まで行ってみた。 「うわぁ~」 敷地内の全ての植物が枯れ果て、その中央に朽ちた邸があった。そして、異様な気配が漂っていて、それ以上は歩を進めるのを躊躇わせた。 (これって…俺ひとりじゃ無理かも) 背筋を走る悪寒に素直に従い元の場所に戻った。 「申し訳ありませんが、一度館に戻り相談の上で出直して参ります」 「そうか、よろしく頼む」 「はい」 しかし、せっかく来たのだから、このまま帰るのも釈然としないものがあり、杖を取り出すと接している敷地の境界に結界壁を敷き、こちら側の植物に豊穣の魔法で再生をかけた。 「しばらくすれば元通りになると思います」 「そうか、ありがたい」 ホッとしたような顔で礼を言われ、ラシルは邸を後にした。
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