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「なんでそこで黙るかなぁ」
「疚しいことが無いなら話せるのでは?」
「いっそ、潔く認めたらどうです?」
三人三様の言い種に、ラシルはちらりと視線を上げる。
「…疚しいことはしてない」
「だったら納得のいく説明をお願いします」
「…いや、あのぉ」
ラカスの冷たい視線を避け、言いにくそうに顔を隠すラシルを見ていたユールがあることに気づく。
「耳が真っ赤だ」
「っ…」
卓にめり込む勢いで腕で耳まで隠す。
「何か恥ずかしいことでも?」
トラフが肩をつついて訊く。
「…あ、いや、だから」
何やら先程と違って言い淀むせいで、またぞろ疑惑が再燃する。
「もうっ、いい加減っ、ハッキリしてくださいっ!」
「わっ」
切れたラカスが背後から両肩を掴んで引き起こす。
「っっ…」
「うわぁ~真っ赤っか」
「完全に茹で上がってるな」
ユールとトラフが言うと、ラシルは思いっきりうつ向いた。
「…だから…俺は…約束を守ってるだけだっ!」
「誰と?」
「何の?」
両脇からの問いにさらに赤さを増す。このままでは頭から湯気が出そうな勢いだ。
「そこまで言ったら、洗いざらい吐いた方が楽ですよ」
疲れたようにラカスが背中を押す。
暫しの沈黙の末、顔の赤みが冷めかけた頃、ようやくラシルがため息をついて口を開いた。
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