廃墟

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ギギギィ~~~ 扉は長い間に蝶番が錆び付いていたらしく、見事なぐらいの不気味な音をたてて開いた。 玄関広間は、埃や蜘蛛の巣、そして剥がれ落ちた壁の瓦礫や、壊れた硝子が散乱していて、これまた見事なぐらいの荒れようだった。 「ここってさ、持ち主とか判ってるの?」 ラシルがおそるおそる周りを見渡しながら訊いた。 「何十年も放置されてたらしくて、記録が定かではなくてな調べきれなかった」 あくまでも冷静にトラスは答え、カルンを振り返った。 「何か、ご存知ないですか?」 以前、王都の光の館に居たのだから何か知ってる可能性を尋ねた。 〈ん…どこかの貴族の妾が住んで居たとか居ないとか、噂にはなっていたが…あまりそういうのは興味が無かったから詳しくは聞いたことは無いな〉 思い出すようにカルンが答えた。 「実際は解らないということですね?」 〈そうだな〉 カルンは何かが気になる様子で視線を反らしたまま頷いた。その視線の先をトラスも目で追った。 そちらには長い廊下があり、奥は光が遮断されて暗闇になっていた。 「何か?」 〈人の気配がしたような…〉 「誰も住んでないって言ってたのに?」 ラシルがビビりながら訊いた。 「空き家に、浮浪人が入り込んでることもあるからな」 冷静な言葉とともにトラスは廊下に足を向けた。 王都には各国からの旅人が往き来しているのだ、不埒な輩が居ないとは言い切れないのだ。 「行くのぉ?」 「実際に見て確認した方が早いだろ」 スタスタと歩き出したトラスに、躊躇うこと無くカルンもついて行った。 「う…二人とも、度胸良すぎ」 玄関に取り残される状態に我慢出来ず、ラシルも二人の後を追った。 あまりの暗さにトラスが杖の先に光球を灯した。窓が外から板張りされているために、外光が入らないのだ。 〈…〉 歩み進むに従ってカルンが険しい表情になっていった。 〈ラシル、感覚を解放してみろ〉 「えぇっ!?」 実は邸内に踏み入れた時点から、ラシルが意図的に感覚を閉じていたことはカルンにバレていた。 〈お前が一番正確に現状を把握できるはずだ〉 「…イヤなんだけど」 すでに雰囲気だけで充分、嫌な予感がしているのだ。
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