第1章

4/44
前へ
/44ページ
次へ
睦月と最初に知り合ったのはユチョンだった。 そう、ちょうど1年前の昨日。ユチョンは鮮明に覚えている。 1stライブの後だった・・・・・ 海で震えながら泣いていた睦月を、拾って宿舎に連れてきた。 何も話そうとしない彼女に、暖かいココアを入れて。毛布で包んだ。 まだ日本語がうまくでてこなくって、なんてなぐさめていいのか分からなくて苦しくて、ユチョンは隣に座って歌を歌った。知っている日本語の歌をありったけ・・・・・ 彼女が泣き疲れて眠ると、ユチョンは仕事に行く準備をして、入れ違いで帰って来るメンバーに置き手紙をする。 【オレのおんな、てだすな!  ユチョン】 それを部屋のドアに張り付けると、ポケットから車の鍵を取り出し家を出る。 現場に向かう車の中でも、彼女のことが気になったが、さっさと仕事済ませて帰ればいいと、腹をくくる。 ジェジュンは部屋の前で足を止める。 「なんだこれ?」 ユチョンの手紙を指先でトントンと叩き、その指を考えるように顎にあてる。 「あいつ、とうとう宿舎にまで女連れ込んだのかよ、、、、、しかもここ、俺の部屋でもあるんだけど、、、、、」 ジェジュンは部屋に着替えを取りに入る。 ユチョンのベットには確かに誰か寝ている。毛布を深く掛けているので顔までは確認できない。 「はあっ。俺の毛布、、、、、」 ジェジュンは着替えと枕を手に部屋をでる。後ろ手にドアを閉めようとして振り向くと、ベッドの上に彼女が起き上がっているのがみえた。 「あ、ごめん、起こした?」 「・・・・・」 返事はない。 「なんだ、俺たちと口聞くなって言われてるの? 無視しろって?」 彼女は”ぎゅっ”と毛布をつかむ。 「いいにくいんだけど、、、それ、俺の毛布、、、、、外せる状態ならもらえるかな?」 彼女がばっと、毛布を剥ぐ。 ジェジュンは一瞬ぎゅっと目を閉じ、おそるおそる目を開ける。 「ああ、、、服、、、着てたんだ。」 彼女の顔がみるみる赤くなる。そして、ジェジュンに向かって側にあった枕を投げつける。 「うわぁ、、、」 ジェジュンが一歩後ずさり、枕はジェジュンの足下に落ちる。 「なんだよ、、、ユチョンの女なんだろ。」 彼女はその言葉の意味を理解して、唇を噛む。 目にはうっすらと涙を浮かべ、ジェジュンを睨みつける。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

115人が本棚に入れています
本棚に追加