‐新任教師、萩原海斗‐

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晴れて大学を卒業し、社会人となった俺。 ――4月 「はじめまして。この春から教師となりました、萩原海斗です。担当は生物になります。まだ分からないことがたくさんで、頼りないかもしれませんが、どうぞ宜しくお願いします」 生まれて初めての、体育館の舞台上での挨拶。 着慣れないスーツが少し堅苦しかったが、それもあまり気にならなかった。 俺が話し終えると、体育館には複数の女子生徒の悲鳴のようなものが一斉に響き渡った。 耳を塞ぎたくなったが、そんなことをしては印象が悪くなる。 俺は笑顔でお辞儀をし、舞台を降りた。 今思えばあの時、悲鳴を聞いて耳を塞いで嫌な顔をすればよかったのかもしれない。 いや、もっと冷血に「煩い!」って叫べばよかったのかもしれない。 この日のせいで、俺は周りから“優しくて、かっこいい先生”なんて阿呆らしい肩書きがついてしまった。
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