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『見つけたぞ!
ここで死ねぇっ!!』
1匹の蝶が、∀とDXに向かって飛んでくる。
まだ、距離がある。
大丈夫だ。ジスはつぶやく。
「射線軸上にいる全てのMSは退避しろっ!!
今すぐだ!!」
全ての機体が逃げていく中、ターンXは尚も接近してくる。
『ジスさん!!』
ロランが叫ぶ。
まだ大丈夫だ。何度めか、つぶやく。
『うおぉぉぉぉっっ!!』
「俺達の世界みたいな悲劇を、繰り返させるもんかっ!
ツインサテライトキャノン!
いぃっけぇぇぇぇぇっっ!!」
目の前にいる蝶に向かって、DXが咆哮し、その体を狙い撃つ。
『ば、バカなっ!?
これほどの、出力がぁぁぁ……っ!!』
ターンXは為す術も無く、融解していく。
そしてやがて、悪魔の叫びは、蝶を跡形も残さず、その周囲一帯を消滅させた……。
――――戦いは終わり、ミリシャの仲間達は宴会を開いていた。
「凄かったですね、あの兵器」
ロランとジスは宴会場の外で会話していた。
――あの後、ロランは∀を地中に埋めてしまった。
『こんな兵器は、もう必要ありません』
確かに、とみんな頷いた。
「あれは、あまり使いたくなかったけどな」
ジスはため息をついた。
∀の無尽蔵に溢れる謎のエネルギー――月光蝶システムのエネルギーだ――をサテライトキャノンに使った結果、ターンXの周囲一帯を焼き払ってしまったのだ。
その場の自然は失われ、多少なりとも、犠牲を生んでしまった。
「でも、貴方達のお陰で、この世界は救われました。
ありがとうございます」
スッ……と手を出すロラン。
ガシッ、とその手を取るジス。
お互いに笑う。
「じ~す~っ!」
突然、後ろからジスに抱き着く少女。
メアリーだ。
どうやら酔っているらしい。
「なんで酔ってんだよ!?」
「そんなことどうでもいいじゃん…!
どーしてもっと私のこと気にかけてくれないの!?」
わぁわぁ叫びながらジスの首を絞めるメアリー。
「ぐ…ぐるじ……!」
「あはは……」
苦しむジスを見て、ロランは苦笑する。
ロランは空を見上げた。
満月の輝きが、眩しい。
「そうだ、ジスさん……!」
ロランが横を見た時、ジス達はいなかった。
宴会場でも、アリアスが突然いなくなったらしく、大騒ぎしていた。
ロランは再び空を見上げた。
「また……、会えますよね?」
小さな呟きが、涼やかな風に溶けていった……。
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