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「ど、どどどどうしよう」
煌めく銀髪を、動揺の瞳で見つめながらおたおたしていると、低い唸り声が聞こえた。
(苦しそう)
辛そうに歪んだ男の顔を見て、我に返る少女。
(早く起こさなくちゃ)
そんな思いが少女を急き立てた。
「please ウェイクアップ!!」
使いなれない英語を叫びながら肩を揺すった。だが、まだ男が目覚める気配はない。
(こんな顔して寝てほしくないよ。見るなら幸せな夢を見てほしい。だから、早く……)
心配そうに見つめながら、彼女は素直に願った。
こんなふうに誰かに心配されたことなどない彼女だが、それ故に、相手が誰であれ過剰に心配してしまう。
愛の欠けた子供は、愛の注ぎ方を知らない。
「……うっ」
男が、顔をしかめ頭をさする。目にかかるほどの前髪が、顔の半分ほどを隠した。
「だっ、大丈夫ですか!?」
「誰だっ!」
驚いたような怯えたような声で叫ぶと男は、勢いよく起き上がった。
少女は、その反応に驚いたが、日本語が通じることにひとまず安心して胸を撫で下ろした。
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