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「帰る場所は、あるんですか?」
男は、振り向き訝しげに少女を見つめた。
「君には、関係ない」
「そんなことないです!」
真剣な眼差しで、少女は咄嗟に言い返した。
男は、それに少し驚いたような顔を見せるが、またすぐに人を寄せつけない鋭く冷たい表情に戻った。
そんな彼を見るたびに、少女の胸は、締めつけられるようにキリキリとした小さな痛みを感じていた。
「……どうして?」
「だって、あなたは道端に倒れていたんです。そんな人をこのまま、ただ、帰すことなんて私にはできません。もう関係ないわけない!……それに――っ」
少女は言い淀み、ゆっくりとうつむく。肩にかかった髪が、さらりと少女の頬を撫でた。
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