純な巡り合わせ

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 少し肌寒い風が、少女の首筋を撫でた。燦々と照りつけていた太陽も今では、気ままな雲の向こうで見え隠れしている。  秋の日は釣瓶落としとは、よく言ったものだ。下校途中の風景もやや変わり少女は、移り行く季節を楽しみながら帰宅していた。  角を曲がったその先には、少女の家がある。一人で暮らすには、少しばかり広い1階建ての家――  両親は、まだ5歳になったばかりの彼女を1人家に置いて旅行に出かけ、その旅行先で亡くなった。  この家と少なからず遺された財産は、親戚に渡りまだ幼い彼女は、中学卒業まで、両親と暮らした家ではなく親戚の家で育てられた。  そして、昨年、両親の遺した家に住もうと、そこから近い公立高校への入学を決めた。偏差値は、中の上といったところで、そこは、制服が可愛いことで有名だった。
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