純な巡り合わせ

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 男は、まだ、先ほどと変わらない格好で横たわっている。それを確認すると、ほっとしたように表情を緩ませる。 「さあて、何作るかな~」  少女は、洗面所を出て左にある白を基調としたキッチンで、夕飯の支度を始める。いつも自分で料理をしているので、ある程度の料理ならば手慣れたものだろう。 (ええっと……)  顎に手を添えながら、何処となく上を見て献立を考える。少しすると、一人微笑んでまな板と包丁を用意した。  そして、少女の身長よりもやや低くて白い冷蔵庫を開けて、いくつかの野菜を取り出すと、リビングの様子を窺った。  (見ず知らずの男の人だけどひとりの夜よりもいいかもな~)  思って、右手を頬に添える。 「……ちょっと、どきどきするけど」    彼女の心は、はじめて家に見知らぬ男をあげた不安と、外国人への好奇心でいっぱいだった。 「お客さん、お客さん~。見知らぬ異国のお客さん~♪」  変な歌を口ずさみながら、華麗な包丁さばきで手早く食材を切っていく。
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