純な巡り合わせ

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 それから1時間ほどして、定番のシチューが出来上がった。  リビングの焦げ茶色をした楕円型テーブルに、盛り付けた暖かいシチューを運ぶ。続いてご飯、箸を置いた。  どのお皿にも、可愛らしい熊のマークがついている。  ご飯の準備も整ったところで少女は、そろそろ男を起こそうと思い、どきどきと高鳴る胸と手の汗を無視しながらゆっくりと近寄る。  そっと、男の顔をのぞきこむと、さらさらとした前髪の隙間から、大量の汗が見えた。そして、眉間にしわがより、ギュッとまぶたを閉じている。  どうやら彼は、うなされているようだ。  さきほどの胸の高鳴りは、不安に変わり何事かと焦る少女。 「……あの、大丈夫ですか?起きてくださっ……!?」  突然、肩を揺さぶっている手と、声が止まる。少女は、気づいたのだ。言葉が伝わらないかもしれないという、大きな問題に。
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