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トモ「…これが、最後の弾倉」
トモ「…これで敵を引き付ける」
トモ「…俺1人を殺すだけでも…少しぐらいの時間は稼げるかもしれない…」
トモは最後のマガジンを銃に込めた
手の甲にはかけがえの無い友と同じ焼印がつけられている
それを眺め、そして呟いた
トモ「…生きろ、生きたければ殺せ」
その言葉は焼印に記された言葉
子供である前に兵士である彼らに課された絶対的なルール
トモ「………!!」
トモ「うわああああああああ!!」
トモは奇声と共に飛び出した
手にした銃に込められた弾は…
マガジン一本分。
特攻
それが彼の決断
撃ち続ける弾は次々に敵を仕留めていく
一人、二人と…
トモ「だあああああああああ!!」
何もかもが残像に見える世界でトモはまっすぐに銃を撃ち続ける
まばたく銃弾は自分を掠め消えてゆく
不思議だった
トモが気付いた時、銃弾はすでに無かった
銃身からは空気の抜けたような間抜けな音が何発も放たれていた
弾切れによって起こった空砲である
トモ「うわああああああああ!!…」
トモ「…ああ!…わああああ!!」
不思議だった
トモの口はカラカラに乾き切っていた
一瞬だけ静まり返った戦場に響く空砲
間抜けな音
不思議だった…
トモ「…なんで?」
不思議だった
トモ「…どうしてだ?」
不思議だった
トモ「…どうして俺を殺さない?」
不思議だった…
トモ「どうして俺を殺さない!!」
トモがそう叫んだ
もう空砲の間抜けな音はしていない
敵も攻撃を仕掛けてはこなかった
トモ「…どうして俺を殺さない?」
…先ほどまでの地獄が嘘かのように、敵は立ち尽くし銃身を下に下ろしている
それは銃を向けている自分だけが間抜けに見える位に異様な光景だった
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