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「当たり前じゃないですか」
僕の言葉に理解不能と言いたげな曽良さんの顔は少し滑稽に見える。
「僕は曽良さんが大好きなんですよ?」
僕はクスクスと笑いながら曽良さんに近寄ると、丁寧に話始めた。
「僕はね、こんなに人を愛した事がないんです。愛して愛して愛して……そんな人とずっと一緒にいたいと思うことは当然ですよね?曽良さんも一緒でしょ?ですが、僕の告白を断った。なんで?理由なんか考えるまでもありません。こいつが貴方の心に壁を作っているからです」
そう話続けながら近付く僕に、一歩また一歩と遠ざかる曽良さん。
どんどん離れていく曽良さんに置いて行かれまいと尚も近付く僕。
「でももう大丈夫です。ほら、邪魔をする奴はもういませんよ?僕が消してあげました。初めてで後片付けに手間取りましたが、上手にモノは切れてますよ?曽良さん、僕を褒めてくださいよ…」
両手に切った頭を持ち上げて曽良さんに見せて、ほら?綺麗でしょう?僕を褒めてください、ねぇ、ねぇっ。
「いい加減になさい…」
「え?」
辺りは一気に静まり返る。
さっきまでは夕方だった空も、今では黄色い満月が暗くなった外を不気味に照らしている。
「貴方は少し異常です。僕を愛してくれたことは有り難いですが、その愛は歪んでます……」
―歪んでる?―
僕の愛が歪んでる?
何を言っているんですか?
これ以上の愛なんて何処を探したってありませんよ?
ほら僕はこんなに汚くなって……
ね?本物でしょ?
この愛が嘘だと言うのなら今示してさしあげます。
アイノカタチヲ…………
ピピピピピ……
今日もいつも通りの朝が来た。
もう家を出ても曽良さんのスーツ姿を見ることは出来なくなった。
でも僕は寂しくありませんよ?
だって曽良さんはいつでも僕のベッドの下で見守ってくれているんですから……
―END―
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