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鼓淵
その後、宥心尼となった静は豫州義経との思いを断ち切るべく豫州から委ねられた 初音の鼓 を川に捨て去ります。
初音の鼓 は音色が素晴らしく…
かって後白河法皇より平清盛に下賜された宝で、屋島合戦にて壇ノ浦で発見された鼓です。
豫州は形見として 初音の鼓 を静に与えていたのでした。
磯禅尼は後悔するからと宥心尼に鼓を捨てるのを止めるように諭しましたが…宥心尼の決意は変わりませんでした。
鼓は豫州との煩悩を振り払う為に投げられます。
後に、この川は鼓淵と呼ばれます。
ただ吉野で豫州から渡された鏡は捨てずに肌身はなさず持ち続けていました。
鼓を捨てたのは磯禅尼に対して母を安心させるための方便でしかありませんでした。
剃髪してからも毎日、鏡を観る度に豫州に思いを馳せるのでした。
寧ろ、剃髪した後…さらにさらに豫州を恋い慕う気持ちが強くなる一方だったのでした。
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