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血桜
嫌です!
静を捨てないで下さいまし…
静は、まだ若く判官様のお情けなくして生きていけませぬ……
静は女子であって未だ母ではございませぬ…
静は一人の女子として判官様と死にとうございます。
静は判官様につかれて死ねれば本望でございます。
静を足手まといと言うならば、どうぞ槍で私を串刺しにして曝して下さいまし…
妾といえど、やっと二人きりになれ女子の喜びに酔いしれておりましたのに残酷なお言葉…
静の火照る思いが嫌になりもうしたか、静の肌身に飽きてしまわれたか…
判官様…
吉野山の深雪の中で白拍子を舞います。
悲しみの我が白き肌身…
判官様の冷たい槍で刺し貫いて下さいまし…
我が血まみれになった五体を吉野の雪で覆い隠して下さいましな…
静の熱き血潮は雪に凍てつき閉ざされましょう。
判官様は自由でございます。
静は吉野山の桜となりて判官様を思い…
年が巡る度に狂い咲きます…
そして華やかに散って魅せましょう。
それこそが白拍子の本懐を遂げる時です…
どうぞ…
その槍で我が身を貫いて下さいまし…
…判官様…
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