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ちらほらと雪が街に舞い降りる。
そんな街中を、青年が一人、歩いていた。
「いらっしゃいませ~。」
青年は、花屋の前で足を止めた。
「…そこのユリの花を花束でください。」
「かしこまりました~。少々お待ちください~。」
店員は、いそいそと店の中に入っていった。
雪は、次から次へとコンクリートの地面に舞い降り、そしてあっという間に溶けて、消えていく。
「お待たせしました~。1200円になります~。」
青年は、ユリの花束を受け取ると無言で1000札を二枚、差し出した。
「毎度ありがとうございます~。800円のお釣りです~。ありがとうございました~。」
青年は、500円玉一枚と100円玉三枚を受け取ってまた歩きだした。
ユリの花は、雪に負けないくらい美しい白色で、ほのかに甘い香りがした。
―和~―
青年の頭に、ふと一人の女性が浮かんだ。
ユリのように美しく、ほのかに甘い香りのする女性だった。
「美雪…」
青年は、立ち止まるとふと夜空を見上げた。
綺麗な、藍色をした夜空だった。
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