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ザザ…ン…
(あれから…もう6年か…)
30になった俺は、あの…美雪との、最初で最後のデートで来た、小さな海に来ていた。
小さな海の小さな砂浜。その目立たない所にひっそりと―小さな美雪の墓があった。
「美雪…お待たせ。今年も来たよ。」
俺は、萎びた百合の花をそっと持ち上げ、新しい百合の花束を供え、ひざまずいた。
―あれから…美雪を撃ってしまった幸仁様は正直に自首し、裁判で無期懲役を申し付けられ、今は刑務所の中にいる。
旦那様は、幸仁様が人を殺したことにショックを受け、一週間後に呆気なく亡くなられた。
おかげで松田グループは潰れ、今ではライバル社だった竹田グループが街を埋め尽くしている。
ふと、何か冷たいものが俺の頬に触れた。
―雪だ。
雪がまた、今年も街に舞い降り出したのだ。
―不思議な話だ。
毎年、この日になると雪が降る。
―美雪が、空で笑って見ているのかもしれない。
俺は、そっと立ち上がり、雪が舞う空を見上げた。
―美雪―
突然俺の前に現れて、雪のように消えてしまった百合の好きな女性―
もしかしたら、雪は君の片割れかもしれない―
だとしたら―
俺は、一生雪を愛し続け―
もう二度と叶わぬ恋とわかっていても―
一生、空にいる君を愛し続けよう―
―END―
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