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しかし、柚希の口から出た言葉は、予想外な言葉だった。
「私も彼氏と惚けることにしたから。覚悟してね」
理解が追いつかない。
え? それはつまり、どういうこと?
必死に理解に努めるあたしとは対照的に夏樹はそれで察したらしく、怯えた顔を一変。
声色が明るくなる。
「省吾さん来るの?」
「セイゴさんって誰よ」
言ってから気づく。
柚希の三つ歳上の彼氏だ。
言いたいことが伝わってふんっと胸を張る柚希。
どうでもいいけれど、得意気ならもう少し笑いなさいよ。
「もう二人の独壇場は終わり。これからは、私が見せつける番だから」
「いや、だから見せつけてないって。ていうか、あんたまだうちにいるつもり?」
「当たり前。やり逃げなんて許さないから」
「やり逃げって……」
別に逃げるわけじゃないんだけれど。
まぁ、あれだけあたしに協力してくれたにもかかわらず、結局は目の前で惚けられる柚希の気持ちも分からなくはない。
すると、夏樹がさりげなく柚希のフォローに回る。
「別にいいんじゃないか? 五十嵐のおかげで俺たちはこうして恋人を続けられるわけだし。いわば恩人なんだから、それ相応のおもてなしをしないとな」
「ふぅ……ふふ、まぁ、それもそうね」
それにはあたしも同意見だった。
何だかんだいって、柚希と一緒にいられることも、噂の彼氏と会えることも、楽しみで仕方ないのだ。
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