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褒め言葉を当たり前のようにスルーしたけれど、別に気にした風もなく樹里は続ける。
「えっとね、いきなりで悪いんだけど、私と生徒会室に来てくれない?」
「本当にいきなりだな」
単刀直入。
わかりやすいけれど、省き過ぎもそれはそれで迷惑だ。話がまったく見えない。
「まず、生徒会室ってなんだよ。俺が何かしたのか?」
「ううん、そういうわけじゃなくて。夏樹くんに、会ってほしい人がいるの」
「会ってほしい人、ね……」
相変わらず見えない話だけれど、なんとなく面倒くさい気がする。
そもそも、生徒会が絡んでくる時点で、何か警戒してしまう。
さて、どうしたもんか……。
とはいえ、協力すると言ってしまった手前、今さら断るのも躊躇われる。
まあ、会うだけ会ってみるか。トラブルだったら、身を引けばいい話だ。
「会うだけならいいぞ。付き合ってやる」
「やったー。じゃあ、早速行ってみよー」
「え、今行くのか?」
「うんっ。もう相手の女の子には、生徒会室で待ってもらってるからね」
言うだけ言うと、俺の返答を待たずに樹里は俺の手をグイグイと引っ張って歩き出す。
ろくに抵抗する気のない俺は、誘導されるがままに教室を出た。
一応女の子と手を繋いでるわけだけれど、特に何とも思わない。
妹と手を繋いでるっていうのが、一番しっくりくる感覚だ。
まあ、公の面前で妹と手を繋いで何の羞恥も覚えない兄もどうかとは思うけれど、そこは例え話ということで深くは考えないことにしてくれ。
ていうか第一、年頃の妹は兄と手なんて繋いでくれないから。
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