プロローグ

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大体の人々が眠る深夜の繁華街。 案の定、朝方近くまで営業している居酒屋以外の店はシャッターを降ろしており、歩いている人は殆どいない。 その薄暗い路地裏で、走り抜ける二つの足音が狭い道中で響き渡たっていた。 後ろで走っている男は黒いハーフコートをなびかせ、息を苦しげに吐きながらも走りつづけている。 「……はぁっ、はぁっ、……もう逃げらんねぇーぞっ」 コンクリートの壁で閉ざされた通路の突き当たりまで一人の少女を追い詰めると、男は腰に掛けてあるショルダーから銃を取り出し、学生服を着ている少女に何の躊躇も無く銃口を向けた。 この場合、殺されると考えてもいい筈だが、少女は驚いたり、泣いたりもせず、ただ無表情のまま男の方に向いて立ち尽くしている。 《…我…、ヲ…殺…ス》 虚ろな目の少女から出た言葉はロボットみたいな機械音に似ている声音。 少女の容姿からして、あまりにも似使わない声だ。 「あぁ、お前を殺す。それが俺達の仕事だからな」 男は人間離れした赤い瞳で少女を冷たく見据える。 《殺…ス、コ…ロス…》 突然、少女は同じ言葉ばかりを繰り返すようになり、暫くすると今更死が怖くなったのか、カタカタと小柄な肩が震え始めた。
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