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数日後、五郎の運転で、町へ買い出しに出かけた。
「日用品は、2人で分ければいいだろ。一三、買い終わったら、何か食べようや」
「ああ。五郎、ちょっと寄りたい所があるから、後でまた、ここで会おう」
「わかった。じゃ、待ってるな」
五郎と別れると、一三は、ある場所へ出かけた。
「こんにちは」
「あ、一三さん!いらっしゃい」
そこは、一三の行きつけの本屋だった。
そんなに大きくはないが、本の種類は豊富だった。
「じゃ、これをもらおうかな」
「はい、毎度ありがとうございます」
本を紙袋に入れながら、店主が、こんな話をし始めた。
「そうそう…一三さん、チラッと耳にしただけなんですけどね。一三さんの住んでる所の林の中に、変わった実があるらしいんですよ」
「え?なんだい、そりゃ?」
「いや、まるで、おとぎ話の…桃太郎の話みたいなんですよ。ほら、桃から生まれた、じゃない方の…あるでしょ?
だから、単なる噂だと思うんですが…」
「……」
話を聞き終えた一三は、なんとも言えない顔をしていた。
(若返りの実というのが、あるらしいんですよ)
店主の言葉が、頭の中で響く。
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