冬の訪れ

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「あああああああ!さっびぃいいいいいい!!」  いつもの時間、いつもの通学路は、当たり前に真っ白だった。  それに付随していつもと違うのは、隣を歩く友人の手がいつもより少し赤いことと、僕の手が手袋で覆われていること。  昨日はパーカーだった上着が、今日はコートになっていること。  だけど、一番いつもと違っていてほしい、友人のやかましさに関しては、すこぶるいつもと変わらなかった。 「オマエさ、もうちょっと静かに歩けないのか?俺が恥ずかしいんだけど、マジで」 「いや、だって寒いだろフツーに!冷え込みすぎだろ突然!」  本当に無駄に大きな声で寒い寒いと連呼されると、同じく商店街を歩く同校の生徒やら店先のおばさんやらに見られて恥ずかしい上に、こっちにまで寒さが伝播してくるんだっつーの。  と、毒づいた気持ちを溜め息にして僕は吐き出す。  それにしても、どうにか黙らせられないだろうか、この早坂洋介(ハヤサカ ヨウスケ)という名の騒音源。 .
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