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「さて、と」
男が先程まで背もたれにしていたのは、“大きな何か”であった。
……鎖で巻かれた“何か”。
それは幾重にも鎖でぐるぐる巻きにされて、それが何なのか推測も及ばぬところだ。
長さは345㎝。
重量は45㎏。
形状は……巨大な剣に似ているようだが、刀身と思しき部分は全て鎖で覆われている。
布を巻いた柄が申し訳程度に 2本 生えたソレ。
「…………狩ってやるとするか」
・
────……同刻。
荒野、馬を駆る旅の商人が1人。栗色の髪が夕日を反射していた。
「……クソ…… クソックソ! クソ!
ツイてねぇぜ畜生クソッタレめ! あんな悪魔に目を付けられるなんざ最悪だ……」
商人は、商人同士の集まりのコミュニティ‥隊商と呼ばれる組織に属していた。
隊商の長である男から、使いに出されていたが、その帰りに悪魔に遭遇してしまったのだ。
隊商のベースキャンプまではまだ半日程かかる。とてもじゃないが、老いぼれの“老”馬では逃げ切れない。
「……こんな所で1人で死ぬってのかよ畜生! 死にたくねぇ、喰われたかねえよ!
死ぬのは嫌だ!
クソ! 涙で目の前が滲んでボヤけちまう……!」
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