序章・【舞台開幕】

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 商人はチラリと、目の端で追っ手を視認する。  4本の前脚、  2本の後ろ脚、  (ワシ)のような(くちばし)、  雄鶏(おんどり)鶏冠(トサカ)、  蜥蜴(トカゲ)の尾、  バッサバッサと、風を切り羽ばたく翼。  教会を守護する石像として造られたソレに因んだ名前は、《喉》の意を持つ言葉、ガルグイユが語源とされている。  …即ち、《ガーゴイル》と呼称される悪魔だ。  一般的、悪魔をイメージすると思い描きやすいポピュラーな悪魔であろう。  この地上世界に突如、他次元から干渉してくる未確認知的生命体が現れだしたのは、確認出来ぬ程の遥か昔からだ。  異界に住まう隣人、その名は悪魔。  人間よりも遥かに優れた強靭な肉体と生命力、個体によっては人間を凌駕した知能を持つモノも確認されている。  その容姿は多種多様にして、実にユニークだ。 「バ、バケモノ共め!こっち来るな、近寄るんじゃねぇっ!」  おっと失礼。  どうやら生命の危機に直面している商人には、それどころではない問題らしい。
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