序章・【舞台開幕】

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 頭の中が現実的になったのか、商人はナイフを捨てた。 …諦めたわけでは無さそうだが。 「…はぁ~、ナイフなんかじゃクソの役にも立ちゃしねぇか」  力無くうなだれると、商人はやや自棄に見える自虐的な笑みを浮かべた。  狩猟用のボウガンの存在をやっと思い出した自分の頭の回転の悪さに悪態をつき、老馬の積み荷からボウガンを取り出す。  試しに近くを飛び回るガーゴイルを狙ってトリガーを引くと、ボウガンの矢が射出される! …よし、出発前に整備した甲斐あって、ちゃんと作動するな… 「…ただ、当てる自信が無ぇんだよなぁ」  自信の無い声。  空を飛び回る“的”に当てるという事そのものが、ただ単純に難しいのだ。  現に、先程 放ったボウガンの矢は標的まで届きもせずに落ちた。 …射程距離20メートルってとこか…  こちらに襲いかかって来る時には、奴らも低い位置まで降りてくるに決まっている。  その瞬間を狙い撃ちにするしか…――無いのだろう。
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