【神話】

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   ワンダラーマンションには、こんな言葉が彫られている。一通りの教育を受けた者なら、誰でも読める世界共通のその言葉で。  エントランスホールの床に彫られているのだ。 『名も無き道化共が 骸を積み上げるだろう  そして  道化の王が その屍の上で玉座と王冠を手に入れる  幾星霜 夢の果てに  幾星霜 旅の果てに  道化共は同胞を喪っていく  一人 また一人  やがて 最後の道化が倒れた時  全ての終わりが始まり  全ての始まりが終わる  幾星霜 幾星霜の時を越えて  双子の魂が一つとなり 未完の大器が再び完全なる器へと戻る  如何なる運命も 因縁も 全ては戯曲が如し  戯曲を子守唄に道化は眠る  そして道化は夢をみるのだ  永劫  覚めることのない夢を  願わくば 道化のみる夢が  幸せな夢でありますように』  ワンダラーマンションは、悪魔の巣窟。  この世界の中心で、世界最大最長の大樹に支えられた大陸に。ずっと昔から、数千年前からそこに在る。  美術館とも、図書館とも、大聖堂とも、古城とも、塔にも見えるその建造物は、『夢遊(ワンダラー)(マンション)』。  高さは800メートル以上。  世界最古にして、原初のダンジョン。  その頂きに立った者は、未だ曾て居ない。
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