第一章・一節【舞わる歯車】

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 ネロ=シンクレアは、悪魔専門機関・アルカナの《聖剣》師団に所属するグリモア使いだ。  自身の生い立ちは、自分が生まれた村が悪魔の群れに襲われ滅んだ。  生存者は絶望的と思われた中、泣き声が井戸の中から聴こえてくる。  奇跡的に生き残った赤ん坊が、後にネロと呼ばれるグリモア使いだ。  赤ん坊は、発見した二人のグリモア使いによって引き取られ、以後、二人のグリモア使いが旅をしながら、赤ん坊を育てた。  赤ん坊が少年へと成長した時、ついに悪魔専門機関・アルカナへと預けられる事となる。  アルカナでグリモア使いの候補生となったネロ=シンクレアだが……昔から、他よりも抜きん出た才覚を持ち合わせ、尚且つ、努力を惜しまぬ学生生活を経る。  少年が未だ、グリモア使い候補生だった頃、ついに、ある任務を任された。  だが、そこで出逢ったのは一人の《闇堕ち》という“最悪”。  そして、半身をもがれる様な痛みを伴う“別れ”…だ。  生命の危機。  同僚と先輩のグリモア使いを失い、ネロはまたしても生き延びた。  悪魔との縁は、絆とも呼べるのかも知れない。生まれてから、悪魔に何度も多くの大切なものを奪われ壊されてきたネロは、憎悪を身に宿し生きている。  悪魔を殺し、死に損ねた自分の死に場所を求める旅をしている。  ネロ=シンクレアは、そんな男だった。
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