第一章・一節【舞わる歯車】

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 ネロがそこに居合わせたのは、彼の気紛れでしかなかった。  長期任務という事もあり、一度本部でゆっくり休みたいところだと考えていた彼だが、携帯端末機が魔力反応を感知した。  事のついでだ、と。彼は、現場へ向かうと既に20~30人程の人間の死体が転がっていた。潰れたテントや、ひっくり返った鍋に、息絶えた馬、犠牲者の血で染まった洗濯物……あまりにも生活感が濃く、人の営みがそこにあったのだと実感させてくれる。  剣や槍といった武具が大量にあった事から、旅の商人の隊商か、傭兵団だろうと推測していた。  携帯端末機で、本部に現状報告していると、息のある男を発見した。  男は、一言、二言と遺言を残すと、まるで、眠るかのように静かに息を引き取った。  一応、任務を振ってきた上司である師団長に相談すると…『じゃあさ! 一応、そのコを探してきてよ!』…とのことだった。  ネロは、上司の性格を把握していたので想定の範囲内ではあった。想定通りではあったが、むかついたので、自分が任務を終えたばかりである事を告げると、素早い返答が返ってきた。 『そうなんだ! それじゃあ頑張ってね! よろしく~♪』  ネロはただ静かに、殺意を抱いた。 「……いつか、殺してやる……いつか、必ずこの手で 」
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