第一章・一節【舞わる歯車】

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 本部に待機中のグリモア使いと交代する考えも過ぎったが、悪魔に一人でいるところを襲われでもすれば助からないだろう。  一番近くに居る自分が向かうのがベストだと判断し、結局ネロは悪態をつきながらもミリアとの合流に動いた。  近くの廃村で一時の休息‥無意識に故郷を思い出す。  とは言え、彼の故郷と呼べる場所はアルカナなのかも知れない……一番、長い時間を過ごした場所が其処だから。  ミリアは、既に悪魔の群れに追われており、彼女を発見したネロはこれを撃退、更に現れた彼女の家族の仇であるトロルと対峙する。  任務直後の疲弊から、思わぬ反撃を受けたネロであったが、彼の余力の前にトロルは隷属悪魔の餌食となり果てた。  彼女の境遇にシンパシーを感じたのか、ネロは天涯孤独となったミリアの身柄を、アルカナに引き渡す事にした。  一度、壊滅した隊商のベースキャンプに立ち寄り、2人で不格好な墓を作った。  仲間達の墓の前で、彼女の小さく震えるその背中を見たネロに去来した想いは何だったのか。  現在、2人の出逢いから2年の時が過ぎていた。
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