第一章・二節【聖杯の師団長カミール・ルヴィ=オラム】

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 師団長の部屋が近付くにつれ、豪華な調度品の数々が目立つようになり、師団長の魔力反応を肌で感じる…  やがてネロは、一層豪華な細工の扉の前に到着する。  師団長はこの中だ。  ネロはノック替わりに扉を蹴破った。下手なサラリーマンの月収以上の価値のあった扉は、ネロのキックで蝶番が外れて宙を飛んでいく。途中で何度も大理石の床の上をバウンドしながら。 「やぁ! 誰かと思ったらネロたぬじゃないかぁ♪ よく来たね~」  部屋の中央で一人の男が振り返る。  《聖杯》の師団・師団長カミール・ルヴィ=オラム  その男は、長身痩躯――そんな体格をしているようだった。  フリフリのフリルが付いたタキシードに、金箔をあしらったマントは裏地に愛妻の似顔絵の刺繍付き。  毛先がややウェーブがかった黒髪のオールバックに、左目に掛けられた細かい細工が施されたモノクル。  カミールは、絵を描いていた。……自画像だ。  カミールとは、どんな人物かアルカナの受付で尋ねたところ、受付嬢は暫く首を傾げ複雑そうな笑みで『かなりアレな人』と答えた。  要するに、変人です。と。
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