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師団長の部屋が近付くにつれ、豪華な調度品の数々が目立つようになり、師団長の魔力反応を肌で感じる…
やがてネロは、一層豪華な細工の扉の前に到着する。
師団長はこの中だ。
ネロはノック替わりに扉を蹴破った。下手なサラリーマンの月収以上の価値のあった扉は、ネロのキックで蝶番が外れて宙を飛んでいく。途中で何度も大理石の床の上をバウンドしながら。
「やぁ! 誰かと思ったらネロたぬじゃないかぁ♪ よく来たね~」
部屋の中央で一人の男が振り返る。
《聖杯》の師団・師団長カミール・ルヴィ=オラム
その男は、長身痩躯――そんな体格をしているようだった。
フリフリのフリルが付いたタキシードに、金箔をあしらったマントは裏地に愛妻の似顔絵の刺繍付き。
毛先がややウェーブがかった黒髪のオールバックに、左目に掛けられた細かい細工が施されたモノクル。
カミールは、絵を描いていた。……自画像だ。
カミールとは、どんな人物かアルカナの受付で尋ねたところ、受付嬢は暫く首を傾げ複雑そうな笑みで『かなりアレな人』と答えた。
要するに、変人です。と。
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