第一章・二節【聖杯の師団長カミール・ルヴィ=オラム】

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 カミールはネロの顔を見ると、上機嫌な様子で紅茶をカップに注ぐ。 「君がこの部屋に来るなんて久しぶりだねぇ! …今日は何の用なんだい?」  ネロは無言で愛銃グレイヴの銃口をカミールへ向ける。 「貴様が…非番の俺に‥非常回線を寄越し……緊急召集だと…ぬかしやがったんだろーが」 「あれ?そうだっけ?」  ネロが撃鉄を起こしたので、カミールはカップに口を着けようとしたのを止めた。 「冗談だよ♪ うっふふふふっ。じょ~ぉだんっ☆」 「笑えねぇよ」 「もぉ~う…僕は、君の上司なんだよ? 言葉遣い悪過ぎじゃない?」 「用件はなんだ?」 「あれ‥無視ですかー…まぁいいや。  とにかく、君が来るのを待ってんだよ」  カミールは、A4サイズのプリント用紙数枚をネロへと手渡す。 「それじゃ、今回の任務について説明するね!  砂漠の孤島で知られるアンクヘイヴ半島に、“森”の出現を確認したんだ。至急、調査をお願いしたい」  ネロの表情が固まる。 「なんつった今…“森”だと?」 「イエース」  親指を立てて満面の笑みを向けるカミールの、その親指をべきりっ! と曲げてからネロは思考する。 「うぎゃああああ」 …バカな‥砂漠に森? 俄には信じられんな。悪魔の仕業なのか?… 「ぎゃああああ」  受け取ったプリント用紙には、ある考古学者が砂漠の遺跡調査に立ち寄り、三日前に砂丘に突然オアシスが出来たのを発見した。不思議に思った学者だが、一晩そのオアシスで夜を過ごすと、オアシスがジャングルに変わってしまったとのことだった。 「あぎゃああああ」  学者は、こんな現象見たことが無く、すぐにアルカナに連絡をとった。すぐに、調査隊が派遣されたが、環境が変化したことで、悪魔が集まり事態は更に悪化していた。  ネロは、記事の内容の一文に気になるものを見つけた。 …“森の中で、魔力反応を感知した”だと?…  この地上世界では、生命の精神から生成される産物とされる魔力――それが森の中で、反応をキャッチしたということは‥… 「ああああ!!」 「カミール、煩い。今は考え事してんだから、静かにしていてくれ」 「指! 指がああ! 僕の指がああ!!」
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