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「なに?」
手渡された紙を広げると見覚えのある母の字でこう書いてあった。
《慎太郎へ
突然ですが母さんは旅行に行ってきます。慎太郎の世話は日向ちゃんに頼みました。くれぐれも粗相のないように!では、お土産楽しみにしててね。母さんより》
「どういう事だ!」
「そういう事だよ」
手元の手紙から牛乳で汚れたエプロンを脱いでいる日向に言うと、そっけない返事が帰ってきた。
実は日向の母・早紀(さき)と、慎太郎の母・稚子(わかこ)は幼稚園の頃からの知り合いだった。結婚して一時離れたが、偶然にも引っ越した先がご近所だったのだ。
そんなわけで小さい頃からふた家族はなにかにつけて行動を共にし、家族ぐるみのお付き合いはかれこれ長い。
「お前の親は?なんて言ったんだ」
「あれ?書いてない?その旅行うちの母さんとだよ。あたしは昨日聞いたけど……慎太郎くんのお世話お願いね~って」
「なんで俺には言わないんだ!」
「おばさん『慎太郎はいつも部活で遅いから言いそびれちゃった』って言ってたよ。とにかく二人が帰ってくるまでよろしく」
にこやかに言う日向。
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