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背もたれがキイキィ音を立てる。僕は気を取り直してまた、机に体を向けた。
タバコのヤニで黄ばんだ机に、パソコンを広げ、面白そうな記事はないかと新聞の欄を覗いた。
過去の記事、現在の記事、黙々と画面しがみついていると、ある記事に目が止まった。
それは見逃してしまいそうなほど小さく、写真もない、昔の記事だ。
『病院の屋上から飛び降り自殺』
『◯月×日午前11時35分、病院内で警察に取り調べを受けていた吉原舞さん(18)が取り調べを受けた後、病院の屋上から飛び降り、死亡した。吉原さんの周辺には遺書はなく、原因は明確に分からないため、警察側に何か違法な取り調べが無かったかなど、内部での調べが始まっている。吉原さんは同じ学校で同じ学年の上田祐樹さん(18)と暴力団関係者、倉田純也さん(25)などが関わる殺人事件で、参考人として取り調べを受けている途中だった。』
僕はこの事件をよく知っている。
僕は死んだ吉原と幼なじみだった。僕は彼女を好きだった。今でも鮮明に覚えている、あの屈託のない笑顔。
自殺など絶対にしないはずのあの笑顔との、突然の別れ。それも永遠の別れになるとは当時の僕は考えもしなかった。
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