【吉原舞】

3/8

28人が本棚に入れています
本棚に追加
/142ページ
しばらくすると、居酒屋に移動しようということになって、8人という大勢で、ぞろぞろと歩いた。 私はやはり黙ったまま、一番後ろを歩いていた。 ため息まじりに歩いていると、さっきの軽そうな男が、私の肩に手をかけて、また、2人で抜けだそうと巧みに私を誘導した。 皆の輪から離れ、手を引っ張りどんどん進む彼に、私はまだ何が起きたか分からない。 「どこに行くの?」 やっと出た言葉。 私はここから帰る道が分からない。焦っていた。 後ろを振り返ると、暗闇にみんなが消えていくのが見えた。 居なくなった私たちには、誰も気づかない。 「いいじゃん。少し歩こう。」 そう言って、どんどん人気のない道へ、歩いていくのだ。 怖い。 私はやっと状況が飲み込めた。 掴まれた手首がジンジンと痛む。 さっきより、暗く細い道が見えた。 ここへ入れば、きっと私は逃げられなくなる。 「私帰るよ。」 私は彼の手を振り払って、思い切り走った。 彼の顔も見ずに、走ると、目の前が白い息で真っ白になった。 目の前が真っ暗で、でも必死に走った。 彼の息遣いが聞こえてきた。 私は全力で走ったつもりだったけれど、次の瞬間、私は肩を掴まれ、彼の腕が私の肩から動かなくしてしまった。 怖い、怖い怖い。 必死に抵抗した。 蛇みたいな目は笑っている。 彼の手が私の手をはねのけ、もう一つの手は私の身体を壁に押し付けた。 壁に押し付けられた背中がひんやりとして、またすごく怖くなる…。 「や…やめて…っ!お願いっ…」 「大丈夫だよ。じっとしてて」 そう言って彼は唇を首筋に押しあててきた。太ももの間に足を入れられ、恥ずかしい格好をしてる。 暴れても暴れても、男の力には勝てない。 「いや!いやだ!誰か助けっ…て!」
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加