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私の口を押さえ、彼の力はまた強くなっていく。
もうダメだ…。
そう思った瞬間、私の耳に女の人の声が、入ってきた。
「ね、そういうのって、合意の上でするんじゃないの?」
私と彼の間に入って、そう言う彼女は、黒いパーカーでフードをかぶって、暗いなか、一層分かりづらい格好をしていた。
声だけで、かろうじて、女だとわかる。
「女の子、嫌がってるよ?」
彼の顔を覗き込んで彼女は続ける。
「ん?違うの?そーゆープレイ?」
彼は振り返って、彼女の襟首をつかまえた。
「何?お前?邪魔すんなよ。」
私は彼女に釘付けになった。
襟首をつかまれたことで、暗い中、パーカーのフードがとれて彼女の顔が露になる。
「せっかくいいとこなのに。」
蛇男は、そう言いながら、尚も女の襟首を掴んで、彼女を押し出した。
薄暗い街灯の光が少しだけ差し、彼女の顔が見えた。
彼女の顔立ちは、幼さが残るけれど、クールで綺麗な顔立ちだった。
切れ長の目の中の瞳は大きく、鼻根からすらっと伸びた鼻に小さな唇。
黒い髪は胸の辺りまであった。
襟首を掴まれているのに、女は蛇男を見ながら微笑している。
彼が女に殴りかかろうとした瞬間、彼女は彼の腕を掴み、映画のようなアクションでヒラリと彼から離れた。
離れたらいなや、彼女は体を回転させて、左足を彼の腹へと蹴を入れてしまった。
……すごい。
ドサッと、彼はゴミ袋の山に倒れる。気絶…しているみたいだ。
女は小さい声でこう言った。
「あ、、、マヌケ…」
ぼぅっと見ていた私はその言葉にクスリっと笑っていた。
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