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「大丈夫?」
笑っていた拍子に女が私に安否を聞いてきた。
「気をつけなよ…そんなかわいい顔してんだから。」
私とは目も合わせずに、私のカバンを拾い、手元にさしだす……。
その時初めて目が合った。
受け取るときに彼女が少し微笑んだのが分かった。
「じゃね。早く帰りなよ。」
彼女は振り返り、行ってしまう。
私はどうにかきっかけを作りたくて、声をかけた。
「あの!!すみません!」
…女が近づいてくる。
「ん?何?」
「え…ぇえっと、私、ここからどぅ来たのか分からないんです。どっど…どぅしょうと思って……ぇぇえきっ駅は、どこですか?」
女は笑った。
「プッ。そんなの、もぅ終電ないし、タクシーで帰れば?」
「あ…そっか…。」
なんか、私バカ丸出しだな…。
そう言われ、少し落ち着きを取り戻した。
「………じゃ…私の家来る?」
落ち着いたところに、彼女がそんなことを言いだすから、私はまた緊張してしまった。
でも、私の心は何かワクワクするような鼓動を感じている。
彼女にもとても興味が湧いていた。
………………。
少し間を置くと、女は黒いパーカーのフードを被った。
私は冷えた手の平をギュッと握ると、「お願いします。」と、言った。
彼女は何も言わず、ポケットに手を入れて、先を歩き出した 。私もその背中を追いかけた。
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