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「お姉さんを…かい?」
「そうです。姉を探して下さい。」
理子は真っ直ぐ鳥目を見た。そして、昨夜起きたことを話始めた。
耳鳴りのような音、虚ろな姉、気づけば朝で、家中を探しても姉がいなかったことを、とにかく憶えていることをできるだけ話した。
「そうか…。それは大変だったね」
カタン、と、音をたてて、猫目がペンを置いた。
「ひとつ訊いてもいいか?お前、なんで警察に言わなかったんだ?」
「え…?何でって、それは…。」
完全なる不意討ち。理子はポカンとして、一時猫目を見つめた。
(何言ってるんだろ…この人)
「だって、こんなこと…警察が信じるはずないし…それに、なんか警察じゃあどうにもならないような気がして…。」
理子は言葉を選びながら話した。またつっこまれたら面倒だ。
「この事務所のことは、どこで?」
今度は鳥目が訊いてきた。
「帰り道に広告が貼ってたから…ですけど。」
「へぇ、あれ…まだ残ってたのか。」
猫目がしんみりした口調で言った。その表情には、懐かしむ色の他に、哀しみに似た色が浮かんでいた。
「まぁ、とにかく、こちらでいろいろと調べてみるよ。理子ちゃんも、何か他に思い出したりしたら、事務所に来てね。」
鳥目は微笑み、そして理子に、先程猫目が何やら書いていた紙を茶封筒に入れてわたした。
「家に帰ってから一人で見てね。」
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