File 2

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理子の視線の先には、一匹の黒猫が座っていた。 (猫だけ?まさかこれが喋れるわけない…よね。) よく見ると、尻尾が二股に分かれている。 「…おい、玄関の鍵以外にも閉めなきゃいけないところあんだろ?」 目の前にいる黒猫が喋った。しっかり口が動いていた。理子を見て、確かに喋った。 「あ…ぅあ…わ…で、出ていきなさい!この、化け猫ォ!!」 驚きのあまり、少し声が裏返ってしまい、少し締まりがなかったが、理子は必死に追い返そうとした。 「あぁ、悪ぃ。そっか…普通、猫は人の言葉を喋らないもんな。でも、この声をすぐに忘れるか?ついさっきだってのに…。」 「えっ…。」 生意気な口調、まだ幼さが残る声…何処かで…。理子の頭の中に、数分前の記憶が浮かび上がってきた。 「もしかして、先程の事務所の人ですか?」 ふぅ、と溜め息をついてから、黒猫は宙に飛び上がり、一回転した。 ボン!!と、大きな音がして、辺りに煙が立ち込めた。 「お前さぁ…かなり鈍いな。」 煙が薄れていくにつれて、辺りが見えるようになった。先程迄、黒猫が座っていたところには、猫目が立っていた。 「さっさと残りの鍵も閉めてこい!」 言われて、理子はすぐに立ち上がり、戸締まりをしにリビングに消えて行った。
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