イヴ

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イヴ

アダムの最初に創りだした人間が「イヴ」であった  イヴはアダムと契り 多くの人間を産み落とし  アダムがイヴのもとを去った後にも 近親相姦を重ね 次々と子供を産んだ   アダムの血を引いた子供たちは イヴとは違い わずかに怪物じみたところがあった  そして 完全なる自己を再現するために 失われし不死性を求めた  人間に死を与えたのはアダムではない  それは イヴの仕業である  イヴはアダムの理想像であった そのためイヴはアダムを 不完全な者であると考えていた  より完全な子孫を残すため イヴは子供たちに「達成せざる血」を混ぜた  それが死である  人間はそのために 何一つ達成できないのだ  しかし一つの失敗は 確実に次の失敗を より高次のものとした  それこそがイヴの望んだ完全なる人間の姿であり  人類という 一匹の巨大な生物の姿である  人間は死を授かったが 人類は不死のままだった  しかし人間はその事に気付かぬまま  記憶の根源に残された父の姿に近づくために 不死であろうと望むのだ   すでにアダムを超えた人類には 今もイヴの残した大いなる遺産が脈打っている  「達成せざる血」が怪物以上の怪物の喉を 常に乾かしているのだ
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