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あれから10年。
ロキは帰ってきた。
懐かしい、母国に。
空は晴天、一面に広がる美しい家並みは、ロキを歓迎しているようだ。
ロキはまっすぐ、城を目指した。
「旅はどうじゃった」
10年前と同じように迎えてくれた国王の髭には、白髪が多く混じっている。随分と老いた。しかし、温かさは変わっていない。
国王とロキは、小さいテーブルで、向かい合って座っている。
「とても良い経験が出来ました」
25歳になったロキはすっかり大人びて、日に焼けた精悍な顔をしている。
それを見ながら、国王は嬉しそうに頷く。
ロキは続ける。
「いくつかの国に助けられ、いくつかの国を助け、心の通じる者が多く出来ました」
辛いこと、苦しいことを乗り越えてきた彼の瞳には一転の曇りもない。
「彼らはこれから、この国の良い協力者となってくれるでしょう」
それを聞いた国王は、また2つ頷き、王冠を下ろした。
「ロキ、本当によく帰ってきてくれた。辛い道のりであったことは百も承知じゃ。これからは儂に変わり、この国を良く治めてくれることじゃろう」
国王は帰ってきたばかりの新しい国王の頭に、そっと王冠をのせた。
そして、10年前と同じように、右手を差し出した。
二人は握手した。
他の国民の持つしるしは無くとも、数々の苦難を乗り越えてきた細かなしるしの刻まれた手で。
○○○○
2010/10/21
はなび
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