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信貴山城
永禄八年(1565年)五月
十八日。
大和の国、信貴山城は眠
っていた。
一部を除いては。
天主の方から、山裾の大
手門に向かって、
子供の甲賀忍者が猛然と
駆け下って来る。
二の丸、三の丸、各曲輪
に逃げ入っては、
その場の警備の伊賀者に
見つかり、
追手の数は、どんどん増
えて来る。
二〇人、三〇人、五〇人
、一〇〇人、と。
追手の手裏剣や手槍を、
ひらり、ひらりとかわし
ながら、どんどん逃げる
。
大手門の横、馬場の広場
まで来た時、
逃げるのをやめ、くるり
と振り返った。
追手達は、二重、三重と
取り囲みだした。
ころは良し、と思ったか
、
甲賀の少年忍者は、一際
高い松の枝に飛び上がり
「ピィー」
口笛で合図を送る。
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