愛しきもの・その始まり

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「おめ…でた…?」 「奥様には、貴方と彼女の赤ちゃんが宿っているんです」 アナタトカノジョノアカチャンガヤドッテイルンデス アナタと彼女のアカチャンがヤドッテいるンデス 貴方と彼女の赤ちゃんが宿っているんです 何度も何度も看護師がつぶやいた言葉を牛のように反芻してなんとか意味のある言葉に変換しようとする 「…。……………………っっっ!!?」 看護師から伝えられたことの重大さに彼の脳に伝達するまでにしばらく時間がかかり、その間硬直している荒垣とニコニコと笑う看護師と顔を紅潮させたままの碧は黙っていたがやっとのことで彼の脳に看護師の言葉が届き荒垣は息をのんだ 彼は驚愕した目を看護師から愛しき女に移す。 「今ね…10週間なんだって…」 碧は最高に幸せそうな笑顔を向けてお腹に手を当てる。 「私…ママになるんだ…。真次郎さんが…パパになるんだ…。それに、剣ちゃんが…叔父さんになるんだ…」 荒垣は震える手を彼女の肩に置く 「じゃあ…次の…次の季節には…」 「うん…真次郎さん?」 言葉をなかなか発さない荒垣に不安になったのか、恐る恐る見上げるがすぐに杞憂だとわかる。 嬉しすぎて、幸せすぎて言葉にならない…。今の荒垣の心情はそうだった。碧がお腹を押さえるその上にそっと自分の手で覆う 「ここに…いるんだな…。夢じゃねえんだな…」 「…はい」 そして荒垣は彼女を…いや二人を抱きすくめた 「大丈夫だ。お前もこの子も俺が守る。ずっと一緒だ」 「はい!!」 荒垣の温かい体に包まれて碧は幸せそうに返事をした
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