愛しきもの・その始まり

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照れくさそうにボソボソと礼を言う荒垣の傍らで碧は不安材料を片づけることにした 「と、所で私が倒れた事、剣ちゃんやお兄ちゃんには言ってないよね?」 恐る恐る尋ねると英聖は頷く 「当たり前じゃん。状況がよくわからないうちにあの二人に伝えてごらんよ。仕事も何もかもホッポリ出して戦車か爆撃機に乗って真次郎君を襲撃に行くにきまってるよ『なんであおちゃんをちゃんと守らなかったー』とか寝言を言いながらね。シスコン二人を碧ちゃんの目の前で大暴れなんかさせたらたちまち赤ちゃんに悪影響与えるのが目に見えてるよ」 …やりかねない。 剣助は言わずと知れた碧の双子の兄弟。そして実の姉より義理の妹を愛する幸宏。かたや世界を放浪する国連職員、片や世界の平和を守るPKO隊員。 二人ともエネルギーを持て余して日本を飛び出したのだが、いかんせん碧不足が深刻で彼女の愛情を一身に受けている荒垣を蛇蝎のごとく嫌っている。元々碧を取り合って仲のよろしくなかった二人だが碧の恋人(夫)という共通の敵が出来たことで一致協力するようになってしまった。荒垣にはストレスの嵐だし碧にとっても迷惑千万である。 ゆかりと同じくらい荒垣を心底気に入っている英聖もその辺の事情を解っているので火種を少しでも取り除いているのであった 「とりあえず氷山のご両親と渚ちゃんには赤ちゃん出来た事伝えておくから。シスコン二人とゆかりちゃんは僕らにまかせといて。お友達や職場の人には自分で言えばいいよね?」 「迷惑かけてゴメンねヒデ叔父さん」 「大丈夫大丈夫!それじゃお大事に。楽しみにしてるからね~」 そう言って英聖は去って行った。 「退院したらお前のご両親の墓に報告しないとな」 「そうだね!それに荒垣のお義父さんとお義母さんにも会わないとね!」 誰に伝えよう。あの子びっくりするかなあ等と楽しそうに話す碧を微笑ましく見つめながら幸せを噛みしめる荒垣。これからは一層仕事に力を淹れて碧を支えてやろう。そしてこいつとやがて生まれてくる子を幸せに… 荒垣はこの幸せを命にかけて護って見せると誓う。 終わり そしてその幸せをぶち壊しかねないKYなシスコン共が虫の知らせを感じて仕事を放り出して日本に帰ってくるまであと8時間 …続く?
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