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もともと、彼には“感情”というのが理解、否、理解出来ている。だが、それを表に出せない。そう、出せないのだ。
「チッ。あの忌まわしいクソ実験のせい、か。──皮肉だな」
そう一人愚痴る。
不意に、右目に軽い痛みを感じ、触れる。
……懐かしいな、あの日がよ。
感慨に更けていると、後ろに妙な感覚を得、振り返った。
「お前は──……」
振り返り見れば、サイドポニーの少女が立っていた。
彼女はペコリとお辞儀をしたあと、
「お早う御座います。──桜咲・刹那です。先日は助けていただき有難う御座いました」
そう言った。
グラナは礼儀正しいな、と思うと同時に、
「怪我、──大丈夫か?」
「えっ、あ、はい。もう大丈夫です」
そうか、とだけ言い、少女を見る。
まだ幼い。年齢がだ。見た目から推測するに、十四、五歳だろう。
そんな彼女が昨日、刀を振るい、鬼と闘っていた。
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