第一章『麻帆良学園』

6/26
前へ
/34ページ
次へ
「で、サクラザキって言ったか。今からどこに行くんだ?」 「え? 勿論学校ですが」 学校、とグラナが呟く。 ……たしか、“勉強”するとこだったか。 無縁だな、と思った。 基本的な知識は既に修得しているし、何よりこの歳だ。もう三十はとうに越えている。 「あの、どうかなさいましたか?」 ぼーっとしていたらしく、桜咲が顔を覗き込んできた。 心配されたらしい。 自分の不甲斐なさと、心配されたことに対して失笑しそうになるが、堪える。 「何でもない。で、学校とやらには行かなくて良いのか?」 「はい。まだ時間があるので大丈夫です。──あの、名前をお伺いしても良いでしょうか?」 考える素振りを見せ、間を空ける。 「……グラナだ」 考えた末、その名を告げた。 嘗ての友から貰った名だ。今ではそちらの名の方がしっくりきている。 「グラナさん、ですか。その、失礼ながら外国の方でしょうか?」 困った顔をしながら言葉を放つが、 「外国人……ね。あながち間違っちゃいないか……」 小さく呟くが、桜咲には聞こえたらしく、 「どうか、したんですか?」 「何でもねェよ。それより、その袋。刀でも入ってんのか?」
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加