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「で、サクラザキって言ったか。今からどこに行くんだ?」
「え? 勿論学校ですが」
学校、とグラナが呟く。
……たしか、“勉強”するとこだったか。
無縁だな、と思った。
基本的な知識は既に修得しているし、何よりこの歳だ。もう三十はとうに越えている。
「あの、どうかなさいましたか?」
ぼーっとしていたらしく、桜咲が顔を覗き込んできた。
心配されたらしい。
自分の不甲斐なさと、心配されたことに対して失笑しそうになるが、堪える。
「何でもない。で、学校とやらには行かなくて良いのか?」
「はい。まだ時間があるので大丈夫です。──あの、名前をお伺いしても良いでしょうか?」
考える素振りを見せ、間を空ける。
「……グラナだ」
考えた末、その名を告げた。
嘗ての友から貰った名だ。今ではそちらの名の方がしっくりきている。
「グラナさん、ですか。その、失礼ながら外国の方でしょうか?」
困った顔をしながら言葉を放つが、
「外国人……ね。あながち間違っちゃいないか……」
小さく呟くが、桜咲には聞こえたらしく、
「どうか、したんですか?」
「何でもねェよ。それより、その袋。刀でも入ってんのか?」
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