序章『突発的な邂逅』

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そこで思い出した。今自分は少女を担いでいたのだ。 これじゃまともに闘えない。 「悪いが嬢ちゃん、下ろすぞ?」 へっ? と少女が声を出すが、返答を待たずに下ろす。近くの木の傍に下ろし、凭れかかせる。 そして鬼の近くまで歩き、 「さあ闘ろうぜ、──バケモン!!」      ◇◇ 轟音が響き、木々が薙ぎ倒される。 その様子を少女、桜咲・刹那は静かに、冷静に観察する。 ……あれは、なんだ? 鬼が大男に突進する。 だが、 「ふん!!」 大男が左手を振り、それと同時に大地と木々、そして鬼が吹き飛んだ。 ……魔法、なのか? いや、それにしては詠唱が無い。無詠唱呪文も考えられるが、それにしては妙だ。 「ったく。やっぱこの程度かよ。──もう終わらせるか」 大男が前方に両手をかざした。 すると、突然辺りが暗くなり、不意に空を仰いだ。 「そんな、莫迦な……」 その先は声に出ず、代わりに彼の声が聞こえた。その声は鬼に向けられたもので、 「日輪“天墜”」 異常収束された太陽光線が鬼に向けて墜とされた。
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