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物言いたげな他の社員達を尻目に踵を返せば、すぐ後ろの自分のデスクへと腰を下ろす。
そうしてもう一度、欠けた輪に視線をくれてやれば蜘蛛の子を散らしたように各々のデスクへと戻って行った。
あの場で言うべきではなかった、と分かりつつも。
まるで初めて会ったかのようなあいつの態度に、いつもならしない選択をしてしまったようだ。
…まあいい。
どちらにしろ、俺とあいつの関係性がバレれば話のネタになるのは目に見えている。
コソコソと噂立てられるより、こちらからネタを蒔いてどのように芽が育つのか見物してやろう。
そう決め込むと、今朝方の会議資料を引き出しへとしまい仕事へと取り組んだ。
時折鳴る内線の音、社員同士の業務確認の会話、そういった雑音を聞きながら自分はキーボードのカタカタと言う音を奏でて。
数十分の間パソコンの画面ばかり見つづけていれば、目の疲労も溜まる。
一息吐き、小休憩と画面から顔を上げ目頭を抑える。
軽く指先で揉みほぐせば少しは楽になったようだ。
それから近くだけを見続けたピントを合わせるように、室内奥から順に自分のデスクへと視線をずらしていく。
視界から外したくとも否応なしに映るあいつの姿。
教育係として付けた吉川とも上手く行っているようで、あいつの笑顔も垣間見える。
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